皆さん、映画監督って、どんな仕事をするかご存知ですか。もちろんそれぞれ、人によって、十人十色のやり方があると思います。それにしても、僕みたいな映画監督は、まずユニークさにおいて、日本では右に出る人はいないんじゃないかな、という自負があります(笑) 40歳過ぎに初めて監督としてメガホンを撮って以来、僕なりのやり方で、監督作品だけでも89作もの長編映画を撮ってきました。ほとんどプロデューサーも兼ねています。低予算ながらの地域映画を撮るようになったここ10年間には、脚本も書いたり、撮影や録音も自らやることもありました。60歳過ぎてから、独学で編集も全て自分でやるようになりました。
 ジャンルも様々、作品の規模も様々、自ら知恵を振り絞って常に新しいアイデアを生み出し、どんなことがあっても作品を撮ることを止めませんでした。
 そんな僕もコロナ禍に73歳を迎えることとなりました。様々な価値観が大きく変化せざるを得ない流れの中で、自分が作品を撮り続けることの意味を考えました。肝臓癌の再発というショックな出来事にも向き合いました。体力の限界を感じるようにもなりました。 この辺で監督業にピリオドを打ってもいいかなと思い立ちました。 そして、監督としてどんな作品を最後にしたいだろうとも考えました。 まだ一度も手をつけたことのない、大好きな探偵映画を撮ってみたい!と思いました。しかもそれを、僕らしく地域映画の決定版にしてみせるぞ!と。低予算ながら製作費も何とか用意できました。スタッフ、キャスト共に、たくさんの人たちが賛同してくれて力を貸してくれることになりました。クラウドファンディングを通して予想をはるかに超えた方々のご支援をいただくこともできました。
 5月24日にクランクアップしてからは、編集作業や広告宣伝の協力者として、たくさんの若者たちが力を貸してくれました。
 本作品の制作を通して、応援してくださるみなさんとの絆を深めたいという思いはもちろんのこと、完成する作品と共に、こんな僕の映画人生を知っていただくことで、未来を担う若者たちに映像制作を少しでも身近に感じてもらえたら、という僕の願いも実現しつつあります。
 今まで企画を初めてから公開に至るまでの日々が、こんなに楽しかったことはありません。僕の人生最後の監督作品「SWANEE 野毛探偵事務所」は、僕にとって最高の映画になりました。
映画監督 市川徹